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内分泌と生殖行動

​家禽の就巣性に関する研究

ニワトリが卵を産み、その卵を温め、雛を孵化させ育てるまでの一連の行動である就巣性は、一見すると当り前な行動です。しかし、これらの行動は話には聞いても実際に目にする機会はあまりないと思います。それもそのはず、採卵用に品種改良されたニワトリは産卵成績を重視した品種改良の過程で就巣性が失われているからです。就巣性は産卵を停止させる一因になるため、産業的に好まれていません。しかし、採肉用の一部のニワトリやシチメンチョウなどの家禽では就巣性は保持されており、就巣性のメカニズムの解明とその排除が求められています。そこで私たちは就巣性を保持している品種のニワトリを用いて、就巣性とホルモンの関係について調べています。
現在、就巣期(抱卵期、育雛期)の卵巣機能や、育雛期における親鳥の雛の認知とホルモンの関係について重点的に調べています。また、就巣性を持つニワトリとそうでないニワトリを掛け合わせ、交雑種を作ることで、就巣行動の発現と遺伝子情報との関係についても調べています。
また、就巣期の形態学的変化に関しては、抱卵斑の形成機構についても研究しています。卵を温める行動である抱卵を行う鳥類の多くは、体の一部の羽が抜け落ちる換羽を行います。この換羽により生じた皮膚の露出部分のことを抱卵斑と言い、卵に親の体温を効率に伝えることができます。従来、この抱卵斑の形成は性腺から分泌される性ステロイドホルモンと脳下垂体前葉から分泌されるプロラクチンの作用によるものだと考えられてきました。しかし、私たちは、換羽に関係する甲状腺ホルモンも抱卵斑の形成に関与しているのではないかと考え、甲状腺ホルモンと抱卵斑形成の関係性について調べました。その結果、私たちは甲状腺ホルモンの一種であるトリヨードサイロニンが、この形成機構に重要であることを明らかにしました。今後は性ステロイドホルモン、プロラクチンおよびトリヨードサイロニンがどのようなメカニズムで抱卵斑の形成に関与するのかを明らかにしていきます。

カピバラや動物園動物に関する研究

カピバラは南米に生息する世界最大の齧歯類です。日本国内では動物園のみならず、多くの水族館でも飼育されるようになり、触れ合いや露天風呂などのユニークな展示を通して私たちを楽しませてくれます。そんなカピバラですが、実は多くの可能性を秘めています。例えばカピバラの胎盤の構造はヒトと類似していることが分かっており、実験動物への応用も期待できます。しかし、カピバラの繁殖生理、細胞機能や分子メカニズム等はほぼ研究されていないため、研究対象として非常に魅力的な動物です。そこで私たちは国内の大学では唯一、カピバラ雌雄個体を飼育し研究を行っています。
カピバラの計画的繁殖には繁殖生理の把握が必要不可欠です。私たちはこれまで、ハズバンダリートレーニングを利用した無麻酔採血を確立しました。これにより採取した血液中ホルモン濃度に加え、代謝された糞中ホルモン濃度を測定することで、発情周期の推定や妊娠判定方法が可能であることを明らかにしました。現在は飼育個体の繁殖を視野に入れ、ホルモン測定値の変動に伴う、カピバラの行動や体内で起きる変化の探索を行っています。
最近になって、「種の保全」という言葉を耳にする機会が多くなったと思います。それに伴い世界中で、希少動物個体だけではなく、遺伝資源(体細胞や遺伝子など)の保存が進められています(冷凍動物園、Frozen zooと呼ばれています)。私たちはこれまで、動物園と連携し、死亡個体の組織から生きた細胞(線維芽細胞)を採取・培養する手法を確立してきました。現在は、培養した細胞を様々な実験に応用し、動物の細胞が持つ機能的解析を行うことで、種の保全を目指した研究を行っています。
これらの研究は、多摩動物公園・伊豆シャボテン動物公園・埼玉県こども動物自然公園などと共同で実施しています。

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